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スペシャルコンテンツ 私たちの誇り
始動
馬車と貨車に揺られて旅をした。
1950年代。駅から競馬場へと続く道に、大きな機材を積んだ馬車の姿があった。山口シネマの社員たちが、次の開催場を目指して、現像機や撮影機を運んでいるのだ。東京から中京へ、中京から阪神へ。開催のない競馬場に、せっかくの機材を眠らせておくわけにはいかない。主催者やファンが求めるパトロールフィルムを提供するため、馬車と貨車に揺られて山口シネマの社員たちは旅を繰り返した。65年の時を経て、彼らの馬車は「大型中継車」に形を変えた。一台はITV(インフォメーションテレビ)と呼ばれるファンサービス用の映像制作を行い、もう一台は公正確保のためのパトロールビデオを制作する。全長約11m、車両総重量約18t、10名を超えるスタッフが作業をすることも可能なこれらの車両は、キー局が運用する中継車に匹敵するほどの存在感を放っていた。山口シネマの続けてきた旅が、時の流れに練磨され、格段に進化した証でもあった。

中継車完成の修祓式

もっと合理的に、もっと柔軟に。
大型中継車が導入される以前、ファンサービス用の映像やパトロールビデオの制作は、全国10場に設置した専用スタジオで作業を行っていた。「スイッチャー」という映像を切り替える装置だけでも30式あり、膨大な運用機材の保守や更新は大きな課題だった。そのうえ、パトロールビデオ用の機材は一部持ち出して運用する必要があり、複雑な管理を余儀なくされた。2012年、20名ほどのメンバーからなる社内プロジェクト「CIC(Cinema Innovation Construct)プロジェクト」が動き出した。より無駄なく精度の高い映像放送運用システムを提案し、競馬場運営の刷新を加速させることが、このプロジェクトの骨子だ。中でも、機材の合理的で柔軟な運用は大きなテーマだった。システムや機材をコンパクトに集約し、移動を容易にすること。理想に適う中継車を作り出すため、主催者である日本中央競馬会や開発会社とともに、2年に及ぶ試行錯誤が行われた。

中継車内

山口シネマの旅は終わらない。
2014年5月、2台の大型中継車が札幌競馬場に姿を現した。社員の多くが、まず想像以上の広さに驚いた。これなら一日8時間のライブ中継でも、ストレスなく作業に集中することも可能だろう。より合理的かつ柔軟な運用という当初の目的を達成するだけでなく、安定性の高い臨場感に富んだ映像を生み出すうえでも、大きな変革をもたらすものだった。馬車から始まった山口シネマの道のりは、あくなき挑戦によって大型中継車へとたどり着いた。しかしもちろん、この旅は道半ばである。4K/8Kの超高画質映像やIoTの活用など可能性は次々と芽吹いており、新たな成長を見据えてもう動き出している。創業から間もなく100年、これからも山口シネマの旅は終わらない。

次世代への旅が始まる